BLOG by tdswordsworks

ACTIVATE MY MIND. Still Feb 4th 2004 -twitterに書ききれない雑感など-

マイナンバー・ガイドラインに続いて、こちらも大注目の個人情報保護法改正の動き。

今年の通常国会に提出される予定とされていて、
去る12月19日には、政府の検討会において内閣官房より
パーソナルデータの利活用に関する制度改正に係る 法律案の骨子(案)
が公表されましたので、今度はこちらについて。


まず、改正骨子の案の概要としては、次の5点にまとめられます。

  1. 個人情報の定義の拡充
  2. 適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保するための規定の整備
  3. 個人情報の保護を強化するための規定の整備
  4. 個人情報保護委員会の新設及びその権限に関する規定の整備
  5. 個人情報の取扱いのグローバル化に対応するための規定の整備



1と4については、ふんふんなるほどねーといった内容であまり懸念材料もなく
妥当な方向性だと思うので割愛。
2,3,5について気になるところをピックアップしてみます。



2.適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保するための規定の整備

(1) 匿名加工情報(仮称)に関する規定の整備
(ア) 第三者に提供するために匿名加工情報を作成するときは、4の個人情報保護委員会に届け出た上で、個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、個人情報から特定の個人を識別することができる記述等の削除(他の記述等に置き換えることを含む。)をするなど、当該個人情報を復元することができないようにその加工をしなければならないこととする。また、匿名加工情報を作成した者は、削除をした記述等及び加工の方法に関する情報の漏えいを防止するために必要かつ適切な措置を講じなければならないこととする。


今回の法改正の最大の注目ポイントは、匿名加工方法についての「基準」ですね。
どんな基準に仕上がるのかは非常に気になるところですが、
例えば人材会社が登録者のデータベースをオープン化するにあたっては、
ある程度プロファイリングできる程度に個人の特徴を残さなければ意味がないので、
相当知恵を絞らなければいけないのは確実と言えそうです。



3.個人情報の保護を強化するための規定の整備

(1) 要配慮個人情報(仮称)に関する規定の整備
本人に対する不当な差別又は偏見が生じないようにその取扱いについて特に配慮を要する記述等(例:本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪被害を受けた事実及び前科・前歴)が含まれる個人情報については、本人同意を得ない取得を原則として禁止するとともに、利用目的の制限の緩和及び本人同意を得ない第三者提供の特例の対象から除外する。


ある程度定着していると言える「機微情報」「センシティブ情報」と言い回しを変え、
「要配慮個人情報」という造語をした意図が気になります。法案をつくるにあたっても各所からの陳情に
「配慮」する必要のある規定ですが、OCODプライバシー・ガイドラインから大きく逸れないようにしないと
いろいろと弊害も出てきそう。JIS Q 15001の規定との整理も待たれるところです。


(2) 第三者提供に係る確認及び記録の作成の義務付け
(イ) 個人情報取扱事業者は、個人情報データベース等の第三者提供をしたときは、提供の年月日、提供先の氏名等の記録を作成し、一定の期間保存しなければならないこととする。


構造化されていない数名分の個人情報が「データベース等」に含まれないことを確認したい
ところです。人材業界は非常に大きな影響を受けることになります。
また、公表資料をみると委託による提供は「第三者提供」に含まれるものとされているようですが、
データベースを同期するなど共同利用に近い形式で情報を預託している場合には記録の作成は
免れるのかなど、現段階では妥当な運用を想定しにくい記述でもあります。


(4) 本人同意を得ない第三者提供への関与(オプトアウト規定の見直し)
個人情報取扱事業者は、本人同意を得ない個人データの第三者提供をしようとする場合には、次の事項を、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出なければならないこととする。
(略)
この場合において、個人情報保護委員会は、その内容を公表しなければならないこととする。


利用目的の変更と第三者提供のオプトアウトについては、既にJIS Q 15001をベースにして
運用している私の勤め先のような事業者にとっては影響がなさそうです。
なお、個人的には、個人情報保護委員会がこれを公表すると、
(語弊があるかもしれませんが)当事者以外の「物好きな外野」によってネット上で執拗に批判され、
結果として事業者や消費者のためにならない事態が生じるおそれがあるのではないかと思います。
また、この「個人情報保護委員会」への届出のために、利用目的と第三者提供の有無について
一元管理されることが半ば必須になると思われるのですが、プライバシーマーク取得事業者
意外でそのような体制を構築できるのか、疑問が湧くところです。


(6) 個人情報取扱事業者による努力義務への個人データの消去の追加
個人情報取扱事業者は、個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく当該個人データを消去するよう努めなければならないこととする。


努力義務とはされていますが、明確に規定されたことで、
ビッグデータ活用との関連でいうと、どんなデータが価値を持つのか分析するまでわからない
というのがアナリティクスにおける定説になっていますので、コンプライアンスとのバランスを
どのように考えるのか、多くの事業者が頭を悩ませることになりそうです。



5.個人情報の取扱いのグローバル化に対応するための規定の整備

(3) 個人データの外国にある第三者への提供の制限
個人情報取扱事業者が個人データを外国にある第三者に提供する場合は、当該提供についての本人同意を得るか、次のいずれかの要件を満たさなければならないこととする。(ア) 我が国と同等の水準にあると認められる個人情報保護の制度を有している国として個人情報保護委員会が定める国にある第三者に提供すること。(イ) 当該第三者が本法の規定により個人情報取扱事業者が講じなければならないとされている措置に相当する措置を継続的に講じるために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備していること。
※現行の各企業の適切な移転手続きが合法であることを明確化。


事務センターやシステム保守をオフショアで運用している場合に懸念になりそうなのがここです。
中韓、フィリピン、ベトナムあたりが(ア)を満たせないと、オフショアアウトソーシングの潮流に
大変動が起きるかもしれません。



2016年1月から利用が開始されるマイナンバー、僕の勤める業種では非常に影響の大きい制度なので、強い関心を寄せています。
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これについて、12月11日に「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」の確定版が、政府機関である特定個人情報保護委員会より公表されました。
同時に、このガイドラインの案の段階で行われていたパブリックコメントの結果についても、寄せられた218もの意見とそれに対する委員会の考え方が並んで記されるかたちで公表されていたので、ひととおり読んでみました。

「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)(案)」に関する意見募集の結果について


参考になる点が非常に多くあった一方で、やはりまだ判然としないガイドも多くあります。
ここでは、特に気になった委員会の回答、もしくは寄せられた意見を、僕のコメントを添えてピックアップしておきます。


11.従業員等が事業者に扶養控除等申告書を提出するまでの間に、その扶養控除等申告書に記載されている扶養親族等の個人番号が漏えいした場合においても、事業者が責任を負うことはありません。

 →そのとおりだと思うのですが、会社がコスト削減のために安価な運送事業者を指定して、その過失により漏えいしてしまった場合には、トラブルになりそうだなと思います。

38.事業者と従業員等との間の法律関係等に基づき個人番号関係事務の発生が予想される場合には、あらかじめ複数の事務を利用目的として特定し、通知等を行った上で、個人番号の提供を受けることができます。

 →「法律関係等」とあるので、事業者と消費者の間の民事上の契約関係に基づいて個人番号関係事務の発生が予想される場合も含むと解釈できますので、派遣登録だけでも、一定の条件を満たせば提供を受けることが可能と言えそうです。

39.記述を、「当初の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲内で利用目的の変更及び本人への通知等を行うことにより、変更後の利用目的の範囲内で個人番号を利用することができる。」という記述に修正しました。

 →「当初の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲」って、個人情報保護法第15条を念頭に置いた記述なんだろうけど、ますますよくわからなくなってきました…。同法に関する経済産業分野のガイドラインにある例示を踏まえて考えると、個人番号関係事務すべてが「合理的に認められる範囲」に含まれると捉えられかねないのではないかと。特に、プライバシーマーク取得事業者には通知公表だけでなく同意確認が求められるので、どんな変更について同意を取り直す必要があるのかが曖昧になると非常に厄介です。

45.複数の事業者から委託を受けている場合において、委託を受けた者は、通常、それぞれの委託者ごとに情報を管理していると考えられます。また、委託契約においては、委託者の情報を他に漏らすことのないように秘密保持義務等が規定されているものと考えられます。

 →果たして民間事業者の実態はそうなのか、疑問に思います。どの受託契約でも共通に用いる書類(例:請求書)は特段分けて管理されていないんじゃないかなぁ。まあ、特定個人情報ファイルを一緒くたにして保管することは確かに考えにくいけれど、安全管理措置として非常に重要な観点なので、これを機に点検・啓発をしたほうがよさそうです。

46.ソフトベンダーに特定個人情報等の修復のためにデータを送る場合も再委託として取り扱われることとなります。

 →次の52の前提としてこの整理だと厳しいなぁと思います。予め契約に入れておくことになるのか?そもそもホスティングサービスの場合は?グループ内のサポート系機能子会社に修復を委託する場合は?いろいろ疑問が出てきます。

52.再委託につき許諾を要求する規定は、最初の委託者において、再委託先が十分な安全管理措置を行うことのできる適切な業者かどうかを確認させるため設けられたものです。したがって、委託者が再委託の許諾をするに当たっては、再委託を行おうとする時点でその許諾を求めるのが原則です。

 →つまり、個人番号関係事務の受託契約については、再委託が想定される子会社への再委託を予め認める内容を盛り込むほうが無難ということでしょうかね。

60.クラウドサービスが番号法上の委託に該当するかどうかは、クラウドサービス事業者がその契約内容を履行するに当たって個人番号をその内容に含む電子データを取り扱うのかどうかが基準となります。(中略)個人番号をその内容に含む電子データは、仮に暗号化等により秘匿化されていても、その秘匿化されたものについても個人番号を一定の法則に従って変換したものとして、個人番号として取り扱われます。

 →ユーザーが暗号化したデータをクラウドサービス事業者側で複合化できないようにすれば、「取り扱う」とは言えず委託に該当しない、と解釈していいのでしょうか?この説明だと判然としませんね。事業者(個人番号関係事務実施者)にとってはマイナンバー制度導入により負担が増えるだけなので、その負担を減らすための情報処理設備の積極的な活用も念頭に置いた回答が欲しかったのですが。

79.制度の円滑な導入、事業者の負担、個人番号の数量等による影響等を総合的に勘案し、原則として、中小規模事業者を従業員数 100 人以下としました。

 →100人の根拠ってなんだよ、という意見はたくさん出そうですが、決めるしかないし、妥当な基準だと思います。

83.電子媒体又は書類等を持ち出す際の安全な方策の例として、追跡可能な移送手段を挙げています。移送する特定個人情報の特性等に応じて適切な移送手段を選択してください。

 →「特定個人情報の特性等」とあるので、「この書類は書留で、この書類は普通郵便で、・・・」と手順を明文化せよということでしょうね。従業員に手間がかかることもあるので一概に決めてしまうのは違うと思います。

91.当委員会においては、本ガイドライン、本ガイドラインに係るQ&A及び研修用資料を整備する予定です。

 →やった!おおいに活用させていただきます。

102.内定者が確実に雇用されることが予想される場合(正式な内定通知がなされ、入社に関する誓約書を提出した場合等)には、その時点で個人番号の提供を求めることができると考えられます。

 →これは明確なガイドですね。誓約書を提出してもらわない場合は入社予定日を内定者が確認した旨の書面を交わしていれば条件を満たすと考えてよさそうです。

106.「契約内容等から個人番号関係事務が明らかに発生しないと認められる場合」とは、地主に対する地代等の支払のように契約内容等により年間の支払金額が明らかで、支払調書の提出基準に満たない場合等が考えられます。

 →「契約内容等により」「個人番号関係事務が明らかに発生しない」の基準も一定の判断ができそうです。

107.(人材派遣会社への登録においても、)登録時にしか本人確認をした上で個人番号の提供を求める機会がなく、実際に雇用する際の給与支給条件等を決める等、近い将来雇用契約が成立する蓋然性が高いと認められる場合には、雇用契約が成立した場合に準じて、個人番号の提供を求めることができると解されます。

 →38のコメントで触れた点ですが、解釈に幅があって混乱しそうです。「近い将来雇用契約が成立する蓋然性が高い」というのは、たとえば希望職種や希望条件等を聴取したり案件を紹介するなどして、派遣会社と登録者の二者間で雇用に向けた具体的なやりとりが行われている状況を指すと捉えてよいのでしょうか。いずれにせよ、マイナンバーの提供を求めるときには何らかのエクスキューズ(たとえば「就業を前提に提供いただきますが、3ヶ月以内に決定しない場合は廃棄します」)を入れたほうがよいのでしょう。

108.社会保障や税の決められた書類に個人番号を記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めるようにしてください。それでも提供を受けられないときは、書類の提出先の機関の指示に従ってください。

 →マイナンバー制度に対する国民の理解は進んでいないし、「お役所」に不信感を持っていて提供を拒む人は結構いると思います。個人情報の安全管理措置について従業員の信用が得られていない会社も収集に苦労するでしょう。さらに、現住所と住民票が異なっていてそもそも本人が通知カードを受け取れないケースもかなり起きるはず。制度開始後しばらくの間(情報提供ネットワークが2017年1月に稼動するまで?)、提出先機関は何らかの経過措置をとらざるを得ないでしょうね。

119.本人の個人番号が記載された給与所得の源泉徴収票は、住宅の取得に関する借入れ(住宅ローン)などで使用することが想定されますが、そのような場合は、番号法第 19 条各号において認められている特定個人情報の提供に該当しないことから、本人の個人番号部分を黒塗りにする等の工夫が必要となります。
133.給与所得の源泉徴収票については、所得税法施行規則により、本人に交付する分についても本人及び扶養親族の個人番号を記載することが義務付けられています。

 →この施行規則は実態(源泉徴収票がローン審査に用いられる)を捉えておらずちょっと乱暴に思えます。本人にマジックペンなどで黒塗りにしてもらうんだろうか・・・。人事部門が源泉徴収票を発行する際に本人に用途を確認して、個人番号を印字するかどうか判断できればいいのに。パッケージソフトでの実装は簡単でしょうし。

140.廃棄が必要となってから廃棄作業を行うまでの期間については、毎年度末に廃棄を行う等、個人番号及び特定個人情報の保有に係る安全性及び事務の効率性等を勘案し、事業者において御判断ください。

 →最大1年間は事務の効率性を勘案してよいということ。具体的かつ現実的なガイドで助かります。

153.(意見:事務処理上、支払請求書と、番号の届出書とをセットで移動させる場合、番号の届出書だけを抜き出して廃棄する事務負荷が高いことから、セットで法定保存年限に従い、保存して良いか、確認させていただきたい。)御理解のとおりです。

 →請求書と番号の届出書を別にするほうが都合がよいのかはまだ考えあぐねているところ。このガイドがあるので、あとは書式の工夫次第でしょうか。

160.バックデータ中の個人番号についても廃棄が必要です。保存期間を過ぎた個人番号については自動的に削除されるようなシステムを構築するなど工夫してください。

 →あちゃ、盲点でした。マイナンバーを保管しておく情報システムのバックアップデータが永久保管になっていないか確認が必要です。

166.(意見:「特定の個人と同一のものであることが明らかな場合と利用事務実施者が認める」という点について、利用事務実施者毎に見解が異なるということがないよう強く要請したい。雇用関係を理由として、身元確認を省略できることの適用について、一つでも適用できないケースがあると、実務上その果実を受けることができなくなるため。)※174,175,177も同様の意見

 →ガイドラインを読んで最も腑に落ちないのがこの記述。提供先機関すべてに確認しなければいけないというのは受け入れ難いし、そこの基準は揃えて示してもらわなければパニックになりそうです。例えば、過年度分の源泉徴収票を市区町村に提出済みの場合は市区町村が本人確認済みとみなせるので不要、となると非常に楽ですが、果たして…。

171.電子情報処理組織を使用して個人番号の提供を受ける場合の本人確認の措置は番号法施行規則第4条に定められており、それに従って行ってください。

 →この番号法施行規則第4条というのが非常に難解な構文で、なんのこっちゃという感じなのです。ガイドラインはそれをかみ砕いてわかりやすく説明してくれるものじゃないのでしょうか…。ここの意見にあるような、本人が携帯電話やスマートフォンで撮影した通知カードと本人確認書類の画像データを人事システムにアップロードして人事部門がそれを確認するという方法が認められるのか判断がつきませんでした。

198.(意見:行政機関等へ提出する法定調書への記載漏れ/ミスや事業者へ知らされていない個人番号の変更により、法定調書へ記載する個人番号に誤りがあった場合、再提出を促す連絡・通知はなされるか。)書類の提出先の機関の指示に従ってください。

 →この点も、業務設計をするにあたって非常に気になるところ。特定個人情報保護委員会の範疇の話ではないので、各機関から早めにガイドが出されることが望まれます。

200.(意見:マイナンバーが記載されるという裏面のコピーは禁止し、表面の許可されるのでしょうか。コピーは裏表とも禁止されるのでしょうか。身分証明書として確認を行う従業員がどれほどの教育を受け、確認者・確認状況の履歴記録を義務づけることになるのでしょうか。疑問です。)

 →なるほど、たしかに意図しない取得は起きてしまいそうです。個人番号カードの裏面に、「個人番号利用事務または関係事務以外での複写を禁ずる」などの文言を入れるとよいかもしれません。


自転車で蔵前橋通りを西端まで。トーキョーワンダーサイト本郷。
mamoru氏の"「THE WAY I HEAR, B.S.LYMAN」より第四章「19 June, 1874」"がよかったのです。
明治の調査隊員の手記を譜面台に置いて「想像」するだけの作品ですが、
湿原の匂い、うねる川のせせらぎ、炭塊の黒い光がその場に存在するようです。

THE WAY I HEAR, B.S.LYMAN 第四章 独想曲「19 June, 1874」

京急線の八ツ山橋踏切の高架化の件、南千住-三ノ輪間(3.9%の急勾配)の通勤ラッシュのツラさを知る者から言わせてもらうとやめたほうがいい。「物理的には可能」だとしても、徐行運転の多いターミナル手前の急勾配はきっと怪我人が出る。旅行客を優先して通勤客を犠牲にしてもいいのだろうか?きっとスーツケースもバタンと倒れるよ…。

品川は大丸有と並ぶか、鍵は京急線の地平化(ケンプラッツ)

今年も瀬戸内海に遊びに行きたいと考えているのですが、
昨年の瀬戸内国際芸術祭で最も強く印象に残っているのがこれです。

板持廃村再生プロジェクト

「数年前に人口ゼロとなった板持集落跡を覆う雑草や竹林を除去し、廃村の姿を提示する。」
(公式ガイドブックより)

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この集落跡がある高見島は、人口43人の超過疎の島。その中でも板持集落跡は、島唯一の港から歩いて20分くらいかかる場所にあります。僕は集落跡までの舗装路を「この道はどんな人たちのためのものだったんだろうか。生活道路のように見えるけど、もはや誰の帰り道にもなりえないんだよな」なんてことを思ったりしながら歩いていきました。道沿いには電線や電灯があったのですが、もう電気は通ってないかもしれない。たとえ道の途中が土砂崩れとかで塞がれても、誰も気づかないし復旧作業も行われないだろうな、などとですね。


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何もない場所へずんずんと歩みを進める僕の行為は、意味がなく、同時にアートそのものでした。


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集落跡は、勾配のややきつい丘の中腹に位置していました。麓からすでに茂みに覆われていましたが、このプロジェクトによって来場者が通れるように草刈りと通路の補修が施されていました。


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人の住まなくなってしまった集落に遺された古井戸や門構えを目にすると、初めのうちは寂寥感とでも言うべきものがこみ上げてくるのですが、徐々にそういう感傷的な表現では済まされないぞと感じるようになっていきます。


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集落跡の最も奥までは特にキツい階段を辿って行きます。
居合わせた他の来場者が「こんなに歩かせておいて何もないのかよ」ってボヤいていて、おいおいそれなら来なきゃいいのに、って思ったんですけどね。このプロジェクトは理解されにくいとは思います。


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5月に増田元総務相が座長を務める「日本創成会議」が発表した衝撃的な試算が、特に限界集落をいくつも抱えるような地方自治体を中心に波紋を広げています。

2040年、896市町村が消滅!? 若年女性流出で、日本創成会議が試算発表

この板持集落跡というのは、まさにその、人の営みの消滅した後に残る土地の姿を提示しているのです。

そもそもこの瀬戸内国際芸術祭自体、過疎化にあえぐ地方の活性化の起爆剤として企画されて成功し、日本全国の田舎で催されるアートイベントブームの先駆けになったといえる取り組み。過疎地のアートフェスでは廃校や廃屋が作品の展示会場として利用されることが往々にしてあり、板持集落再生プロジェクトが「廃村」を舞台としたのは、過疎地とアートの関係性をとらえるならば必然の流れと言えるのかもしれません。
けれど、廃校や廃屋が展示会場として利用されるのは、そこに都会から人を呼び込みたいという思惑が少なからずあるものですが、廃村の姿を提示するというこのプロジェクトの趣旨は、そうしたアートフェスの意義とは一線を画したところにあるはずなのです。

その決定的な違いの根本にあるのは、廃村には「未来」がないということ。
そして、すでに人口が43人と島全体が「限界集落」化している高見島の未来を暗示しているところに、怖さがあります。


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通常、書籍や映像の資料越しにその姿を目にすることはあっても冒険家や研究者やテレビ取材でもない限り、廃村に立ち入るようなことはできません。この廃村を歩いた僕の思索は、街中の博物館で再現したとしても感じ得ない体験でしょう。見るだけでなくその場にいないと感じられない「未来」。
歩けるまでに手を入れるのは相当苦労があっただろうけど、非常に価値のある仕事だと思います。プロジェクトの皆さん、お疲れさまでした。ありがとうございました。


4月29日のライブレポ。
カルチャーがクロスしていく瞬間を楽しめた。

RE: form Jazz サウンド・オブ・ギグメンタ2014


イベント概要はこんな感じ

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『RE: form Jazz』

ジャズメンとビートマエストロたちの供宴!

且つて最先端の音楽であったジャズ。既に歴史化されて久しいこの音楽を、現在の文脈において”使える”サウンドに再構築していく試みを行う。

まずは菊地成孔率いるスペシャルバンドが、ジャズの生演奏を披露。続いて、それらのジャズ音源を素材に、ビートメーカーたちにリアルタイムでビートメイキングを行ってもらう。制作時間はわずか90分。記録されたジャズに対しては、あらゆる解釈が許される。果たしてどのようなビートが再生成されていくか?今、ここでしか生まれ得ない現在進行系の音楽としてジャズがRE:formされていくプロセスを目撃してほしい。

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タイムテーブルとしては、ジャズバンドのライブが1時間→DJタイム→批評家トーク→トラック披露の順。
お客さんの入りも盛況で、入口あたりに人がたまって動けなさそうな状態でした。


菊地さんは超有名ですが、ライブは初見。
そのライブで垂涎モノだったのは終盤の7拍子の曲。7拍子って!すごかったほんとに。
細胞がうねったとでも言えばいいかね。

ライブ後に思ったのはこんなこと。






前々からDTMはちょっとやってみたいなって思ってて、
10人以上のDJがビートメイキングする様子を観察(笑)できたのがおもしろくて!

成果物については、使いやすい素材は被ったりもしたけど、やっぱり料理だなと。
味付けによって全然違う味わいになるのね。
うどんもあったかいのと冷やしのとで感じるものが断然に異なるけど、
サンプリングも、クールにしたりホットにしたりと自由自在。
自身が得意とするのではないような雰囲気に仕上げたチャレンジングなDJも複数いて、
そういう「暗黙のルール」や「スタンダード」を突き破ることこそが称賛される雰囲気が素敵。

ジャズにますますハマりそうになるイベントでした。


 

ビッグデータは「21世紀最大の金脈」とも言われていますね。僕の勤め先にとってもチャンスと言えるのか、そうであるならどうすればよいか。そんなことを見極めたくて、4/22,23に東京大手町で開催された「BigData Conference 2014 Spring」に行ってきましたので、その場でメモした重要そうに思えることと、それをもとに考えたことを、ここにまとめておきます。


【1.データ活用の可能性】

■大きく分けると、可視化と予測の2種類(リクルート)

■ビッグデータ活用検討商談の4類型(NEC)
①オペレーション高度化・品質向上(安全管理、機会損失の発見)
②サービス価値向上(需要予測を踏まえた商品開発)
③マーケティング強化(顧客流入の拡大)
④情報管理強化・不正検知(インサイダー情報の不正開示、ヤフオク不正出品の検知)

■人材ビジネスにおける活用の可能性
①オペレーション高度化・品質向上
└求人情報の正確性の向上
└求人票の完成度分析
└入社後アンケートで蓄積される不満を分析してミスマッチを防ぐ
└特定派遣の未稼働期間の短縮
②サービス価値向上
└FPのエリア分け、ラックの設置場所の最適化
└どのエリア版に載せると最も効果を期待できるか、枠の大きさと予測応募人数(掲載顧客に明示)
└類似案件のレコメンド
└求職者ベースでのライバル分析(どんな人がいつ動きどこで決まるか→いつ動き何件応募すればよいかを可視化)
③マーケティング強化
└登録者の活性化
└スカウトの最適化
④情報管理強化・不正検知
└トラブル(セクハラ等)のリスクレベルを就業先別に付して注視対象を明確化

■ビッグデータ分析の目的は、ユーザーに対してその時その時に最適の体験を提供すること(Yahoo!JAPAN)
└マーケティングよりも先に、感動やより良いサービスの実現に活かすべき


【2.データ分析の事例と組織体制】

■リクルートのビッグデータ活用
IT部門にて2012年1月よりHadoopの基礎研究から始め、2012年10月のグループ再編を機にアナリストチームと統合

■データサイエンティストの人材不足
マーケターとアナリストを組ませて「データサイエンスチーム」としてビルドする(DNP)

■メンバーに求めた成長(リクルート)
キーワードは「浸食」(役割分担を決めきらない)
①Webデザイナー②サイエンティスト③エンジニア
└①デザイナーがアルゴリズムを理解
└②サイエンティストがサイトコミュニケーションとエンジニアリングを理解
└③エンジニアはアナリティクスを理解
└海外スタートアップはエンジニアがサイトコミュニケーションへの理解も進めているので開発スピードが圧倒的に早い
IT部門が勉強会「メディアの学校」で技術情報を事業部門に共有し、案件につなげる


【3.データ分析の最適解の導き出し方】

■明確でわかりやすいアウトカムで経営とアナリストのベクトルを合わせる
└解決したい課題(狙い)を明確にして取り組まないとなにも得られない
└アウトカムが見えてきたタイミングでスモールサイズで成果を出し、それを明確にして経営に焚きつける
└目的は会社の方針とベクトルを合致させよう

■試行の速度を早め、発射台の性能と照準の精度を磨いていく
└ミサイル(データ)があっても発射台と的がないと飛ばせない
└リクナビにおける最重要KPIは一人あたり閲覧数


【4.データ活用を高度化するデータエクスチェンジの可能性】

■キーワードはクロスプラットフォーム分析(Accenture工藤氏)
└年収の高い人が一様の指向性を有するわけではない 外部のオープンデータと掛け合わせてブレイクスルーを探る

■米ACXIOMの事例
Safe HavenとしてのAudience(?) Outsourcing Systemプラットフォームを構築
「Look Alike Modeling」(類似のオーディエンス情報:非PI1を共有)
└匿名化して提供→プラットフォーム上でマッチ→セグメントで分類したデータを共有
「All about the Data」というページを用意して、保有している個人データの種類をすべて透明化

■データエクスチェンジ・コンソーシアム(4/16 日本経済新聞1面)
業界の垣根を越えたデータ交換を促進し、社会価値を創造
目的は場づくり、ルールづくり、システムづくり

■カスタマーエクスペリエンスの向上が目的なら、個人情報(PI1)として保有する必要はない(Yahoo!JAPAN)
└すなわち、識別非特定個人情報の状態でのデータ活用は可能
└とは言え、ユーザーにとってどんなベネフィットがあるかをアピールし、そのための「実験」にユーザーの理解を得る必要がある


勘どころは少し見えてきたので、周りを「焚きつけ」て取り組みを始めてみます!

桑沢デザイン研究所という専門学校の卒展(2/28-3/2)に行ってきました。会社の後輩が夜間部に通っているので、誘われたのです。

デザインスクールの卒展で僕が行ったことあるのは母校の筑波大と武蔵美で、これが3つめ。桑沢の卒展は専門学校だけあって、美大の卒展でわりとある「半径5メートルの世界」に引きこもったような作品は皆無で、全体的に訴えるパワーがきちんと備わっている印象でした。
特に、デザインが果たすべき役割と自分の感性へのこだわりをきちんと両立させた作品が多かったと感じました。マーケットのニーズに対する考慮はあまりなさそうだったけど、そんなのは卒業してからぶち当たればいい壁なのでしょう。学校で身につけるべきは、自分のポジションを獲得するみちすじであって、それこそが本質的なことなんだと思います。

作品はゼミごとにテーマを決めて制作され、まとめて展示されていました。おもしろいと思ったのは、あるゼミの「弱さのデザイン」というテーマの展示。経済成長と近代合理主義に沿って発展してきたインダストリアルデザインに対するアンチテーゼで、行き詰まっている日本の問題をデザインを通して学生に考えさせるようなテーマそのものが興味深かったし、それに応えて、例えば完璧でないものを見てほっとするあの感覚を呼び起こすような、包容力のある作品を制作してみせた学生たちを頼もしく思いました。ただしこの「弱さ」という概念は、ヤンキー文化圏が年を追って隆盛を見せる日本においては結局あまり流行らないのではとも思うわけですが。

ホールでは、ファッションデザインコースの作品を見せるショーも開催。出色の出来だったのは鈴木亜紀子さんの「kaleidoscope」。ボディラインの制約から放たれて自由に舞う万華鏡の世界観は、ファッションショーが提供すべき「非日常体験」に到達していたと思います。ほかに、マーケットニーズに対する嗅覚が優れているのは縁結びのデザインを採り入れた「縁」、飛び抜けたセンスを感じたのは原人と思しき(遠くてはっきりと見えなかった)イラストを全面に配した「起源」という作品でした。まぁこれは完全に僕の好みですけどね。

個人ブログを開設してから今日で10年です。
実はFacebookの開設と同じ日だったりします。(時差を考慮するとね)

近年は、

Twitter:雑感や時事ネタへのコメント
Facebook:趣味関連や仲間うちの話題

という感じで用途の分化が進み、映画レビューも別のブログに集約させたので、更新頻度はもう高くありませんが、記事数805を数えるこのブログは、まさに僕のライフログの重要な一部です。

イベントの感想で記録に残したいものやまとまった論考などは、引き続きこちらのブログにupしていければと思うけれど、たまに記事を書くと自分のライティングスキルの劣化に愕然とするのは、どうにかしたい…。

昨年10月に連泊で訪れた小豆島は、とても素敵な島でした。
土庄港周辺なら生活インフラもしっかり整っている一方で、
島全体を見渡すといくつもの観光資源を兼ね備えていて、
ふらっと遊びにいっても、プラン立ててゆっくり過ごしても楽しめそう。
12月にJetStarの成田-高松便が就航したので、またそのうち行きたいなぁ。


前回の訪問中、現地のアートグループ「MeiPAM」の拠点となっているギャラリーに
立ち寄ると、スタッフの女性が

「今日はもう閉めちゃうんです。イベントがあるのでよかったら来てください!」

と言うので行ってみることにしたのが、
ノルウェー出身のパフォーマー、カタリーナ・ヘンリクセンさんが
砂浜で行ったアーティスト・イン・レジデンスの修了公演でした。


場所は、干潮時だけ向こうの島まで歩いて渡れるようになる「エンジェル・ロード」。
観光ガイドでは恋人たちのスポットのように書かれていたので、行くつもりはなかったんだけど。


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彼女は、本島側の砂浜からゆっくりと、ゆっくりと体を動かして、
時にはうずくまったり時には跳ねたりしながら「エンジェル・ロード」の奥のほうへ進んでいきました。
公演の時間は17時30分からだったので、空はどんどん暗くなっていきます。


その、少しずつ夜に近づく空と、穏やかな海と、
ゆっくりと何かを表現しようとする彼女のダンスが、
すごく自然に僕の思考に溶け込んでいく感じ。

もらった案内によると、作品名は「開かれた海」で、
キャプションとして彼女による一編の詩が寄せられていました。


海を前に生活するのって、
海とどうやって関わりを持つか、ということなんでしょうね。


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