桑沢デザイン研究所という専門学校の卒展(2/28-3/2)に行ってきました。会社の後輩が夜間部に通っているので、誘われたのです。

デザインスクールの卒展で僕が行ったことあるのは母校の筑波大と武蔵美で、これが3つめ。桑沢の卒展は専門学校だけあって、美大の卒展でわりとある「半径5メートルの世界」に引きこもったような作品は皆無で、全体的に訴えるパワーがきちんと備わっている印象でした。
特に、デザインが果たすべき役割と自分の感性へのこだわりをきちんと両立させた作品が多かったと感じました。マーケットのニーズに対する考慮はあまりなさそうだったけど、そんなのは卒業してからぶち当たればいい壁なのでしょう。学校で身につけるべきは、自分のポジションを獲得するみちすじであって、それこそが本質的なことなんだと思います。

作品はゼミごとにテーマを決めて制作され、まとめて展示されていました。おもしろいと思ったのは、あるゼミの「弱さのデザイン」というテーマの展示。経済成長と近代合理主義に沿って発展してきたインダストリアルデザインに対するアンチテーゼで、行き詰まっている日本の問題をデザインを通して学生に考えさせるようなテーマそのものが興味深かったし、それに応えて、例えば完璧でないものを見てほっとするあの感覚を呼び起こすような、包容力のある作品を制作してみせた学生たちを頼もしく思いました。ただしこの「弱さ」という概念は、ヤンキー文化圏が年を追って隆盛を見せる日本においては結局あまり流行らないのではとも思うわけですが。

ホールでは、ファッションデザインコースの作品を見せるショーも開催。出色の出来だったのは鈴木亜紀子さんの「kaleidoscope」。ボディラインの制約から放たれて自由に舞う万華鏡の世界観は、ファッションショーが提供すべき「非日常体験」に到達していたと思います。ほかに、マーケットニーズに対する嗅覚が優れているのは縁結びのデザインを採り入れた「縁」、飛び抜けたセンスを感じたのは原人と思しき(遠くてはっきりと見えなかった)イラストを全面に配した「起源」という作品でした。まぁこれは完全に僕の好みですけどね。