BLOG by tdswordsworks

ACTIVATE MY MIND. Still Feb 4th 2004 -twitterに書ききれない雑感など-

2010年09月

つかさに誘われて、APOGEEのボーカル永野亮さんのソロライブに行ったのですが、これは僕にとって人生で2度目の、プロのミュージシャンによる有料ライブの体験でした。意外に思われる方もいるかもしれませんが、僕はかなりのMusicaholicを自認しているにもかかわらず、誘われる以外でライブに行った事はありませんでした。理由の1つ目は、チケットを取る煩わしさ。2つ目は、以前の僕は極度のパッケージ主義あるいは音源主義で、レコーディングのOKテイクさえ聴ければよいというスタンスでしたし、ミュージシャンが考え抜いた曲順で聴きたいと考えていました。そして3つ目、これは今となっては先入観でしかなかったのですが、ライブは燃え尽きるもの、そして疲れる、ということ。この思い込みは、僕が人生で初めて行ったプロのライブが、スーパーカーの解散ラストライブ(MCなしの21曲!)だったことに起因します。あんなに心揺さぶられ寂寥と幸福に包まれるライブは金輪際経験できないと思うし、あのライブの恍惚は、数年後にこれまた初めてクラブに誘われて行った時まで、僕の中の音楽ライブ体験の欠落をカバーしていたのも事実なのです。


永野亮さんのライブは、渋谷道玄坂のライブバーでシーティングで催されたもので、バンド編成とはいえ燃え尽きるようなものではなく、少しwetな永野さんのポップな歌を聴いてとてもリラックスできるものでした。終わったときには、こんなに楽しい時間を諦め続けてきた後悔とともに、もっと他のライブにも行きたいという強い思いでいてもたってもいられなくなり、帰りの電車の中でライブ情報を調べ始めました。ライブに行かなかった理由の2つ目と3つ目は解消されていて、残るのは1つ目のチケットの問題のみ。そこで、ソールドアウトになりにくいライブイベントのチケットに照準を絞ります。次の日に「予約」という形で参加を申し込んだのが、今年2月に新宿タワレコでインストアライブを観て好きになった、蓮沼執太さん主催のライブイベント「音楽からとんでみる2」でした。



初めて自分で申し込んで行ったライブ。場所は六本木superdeluxe。にせんねんもんだいの激しいリズムとサウンド、サンガツの刺激的な実験ライブ、木下さんの濁りのない歌、そして蓮沼執太チーム。蓮沼執太チームの音楽は本当に好きで、どこが好きかと聞かれるとギターの音色とか豊かなリズム隊とか蓮沼さんの声とかいろいろ挙げられるのですが、どんな言葉を使えば説得力があるのか未だにわからず、tdswordsworksなんてHNを名乗っておきながら恥ずかしい限りです。僕にとって、ライブ鑑賞を新たに加えた音楽フリークの季節の始まりを祝福するような、楽しさと高揚感に包まれたライブイベントになりました。

特定のモードがメディアにおいて、流行っている、受容されている、と報道されることは、メディアがそう判断している、もしくは判断したフリをしているという意味でしかない。今やポストモダンの状況下、メッセージの意味が社会全体で共有されることはない。(曲がりなりにもそれが共有されたと大衆の間に認識が広まった最後の例が「世界にひとつだけの花」であろう。)メディアは、本当はその必要はないのだが、多数意見に基づいて報道するというスタンスを取る。ここに、流行っている、受容されているモードを載せなければならない、という宿命がある。しかし、ポストモダンが深く根付いたこの状況下ではメディアに怠慢があると言及せざるを得ない。それは、記号の意味を説明していないということである。何故そうなるかと言えば、ポストモダンの前は、その説明の必要がなかったからであり、編集責任者が未だにその説明の必要性に気づかないでいるからだ。CDが売れなくなって、みんなで歌える歌がなくなって、という現状をただ嘆く中年は、多感な青春時代をポストモダンの状況下で過ごした僕らとは、記号は流通できるかという命題に対する回答が決定的に異なるのではないだろうか。

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