『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督・2001年公開)

正月休みにDVDで観た。

なぜこの作品を観るのを今まで後回しにしてきたのか、
非常に後悔の念に襲われた。
この作品のことは、
市原隼人を知ったのとほぼ同時期から知っていたのに。

(だってタイトルだけじゃ意味不明だし、
 アートワークからは狂気が感じられないんだもん)


ひとことでこの作品の優れたところを述べるなら、
それは非常にリアルであるということ。




主な出演者は
市原隼人(珍しくセリフが多い)
忍成修吾(今のイメージとはだいぶ違うので驚いた)
蒼井優(この頃は「美少女」キャラじゃないんだ)
Salyu(カリスマ歌手「リリイ・シュシュ」役。但し歌と映像だけ)


市原隼人のドモるようなはっきりしない声と滑舌の悪さが、
感情をうまく言葉にできないようでもどかしい。

忍成修吾の叫びのシーンには共振してしまった。


そうなんだ。理由がわからないのは、
自分の中学生時代をこのストーリーに重ねて見てしまった事だ。

だって、俺自身の体験では、
恐喝もレイプも売春も自殺もなかったのに。

少年の閉塞的な日常が描かれる似たような青春映画はあるけれど、
それらと何が違うんだろうか。





あの頃は、自分の回りの世界がすべてだった。
でも、その世界で暮らす自分の日常が行き詰ってしまった。


だから、オレは音楽や評論に手を伸ばしたんだと思う。
そうやって自分の世界を広げていこうとする。

それでも行き詰って、世界の衝撃的な現実を知って、
そのやり場のない感情をどう処理するか。。。

その点では、この物語の主人公と大きな違いはないんじゃないか。
ただ結末が異なるだけで。


だから、希少な事件の連続によって展開されるストーリーに、
こんなにもリアリティを感じてしまうんじゃないだろうか。