台風の木曜日。
JRはどうやらとんでもない状況になっていたようだけど、
悪天候に強い東武線と地下鉄は、いつもより15分ほど遅れただけ。


会社に着くころには雨雲は去っていて、
オフィスに着くと、窓の外の真っ青な空に迎えられた。
遠くに、房総半島の山並みがくっきり見えるほどだった。



外が気持ちよさそうなので、なんとか休憩の時間を見つけて、
台風で客足が伸びないため早々と値下げされたお弁当を買って、
いつもの公園のベンチで食べることにした。
幸い、風は思ったほど強くなかった。



お弁当のふたを開けた瞬間、



背後の生垣の後ろから猫が飛び出してきた!



ここでよく見かける、白と黒の猫だ。
たぶん他の人が餌をやって居ついてしまった野良猫だろう。


俺は餌やるつもりないよ、ほら、あっち行きな。


足で追い払う。
が、すぐに戻ってくる。

脅かしたりのやり取りを何度か繰り返し、ようやく彼は去っていった。
さて、ようやく安寧のお昼タイムだ。




しかし、半分ほど食べたところで、彼はまたやってきた。
必死な形相で、こちらをみつめている。



そうか。
この猫は、あの嵐の中を命からがら生き延びて、
精根尽きて、よっぽど空腹なのだろう。



そう考えると、急にこの猫を放っておけなくなってきた。



こういうところで餌をやってはいけないのは当然わかっている。
猫に人権はないのだから、飢え死にさせても問題はない。
そもそも動物嫌いだし、普段なら絶対無視していたはず。



しかし、困難を耐え忍んだ彼を、なにかでねぎらってやりたいと思った。



もともとあまり好きではないミートボールを「エサ」として選出。
箸でつまんだ右手を高く掲げ、放り投げる。
食べ残しが出た場合のために、芝生の上に。

猛スピードでそれに駆け寄る野良猫。
むしゃむしゃと音が聞こえてきそうなくらい、無心に食い入っている。
どうやら、やはり相当お腹が空いていたようだった。