まさか、獲れるわけないと思っていた。



イカした仕事大賞。
自薦で優れた仕事を応募、社員全員でグランプリを選出する社内イベント。

俺は、同じ仕事に取り組んだ4人のチームで出場。
そして、


グランプリ・・・!!!



過去6回、管理部門から受賞者が出たことはなかった。
仕事のプロセスや成果、プレゼンで伝わる熱意は一定の評価基準にはなるが、
そもそも全ての仕事を同じ基準で評価できない。
そうなると、共感してもらうのが重要になるのだが、
フロントに比べて仕事の内容がわかりづらく、不利。
社員全員から広く票を集めるのは、至難の業だと思っていた。

それでも、どうしても大賞を獲りたいという思いは、4人で共有していた。
俺たちが取り組んでいる問題は、社内の認知度が低い。
しかしそれを上げれば、問題の解消へ向けて大きく前進させられるからだ。



ファイナルは7分間のプレゼン。全国の拠点にネットワークで中継される。
スクリーンを通して伝えられるものには限界がある。
どんなコンテンツ、要素を入れるべきか、試行錯誤を繰り返した。

プレゼンは、希望通りの仕事に意気揚々と取り組んでいた社員が、
異動してつらく困難な仕事に苦悩する中で、仕事への取り組み方が変わる、というシナリオ。
うちの会社のストーリーと重なる部分があり、共感を誘った。
スライドの背景はカラフル→黒→白、と変化させ、メリハリをつけ、わかりやすく。

俺たちが取り組んだ問題の深刻さを特に強調。
「この問題がなければ、昨年うちの会社に降りかかったあの問題が・・・。」
これで、業績が落ち込んだこの1年間に社員が味わった苦境を思い起こさせる。

業務の説明は、できるだけ平易な表現、わかりやすい言葉を使う。
さらに、顧客の言葉を引き合いに出し、ここでもフロント社員の共感を誘う。
フロントの経験がある俺が、入念にチェックを入れた。

次のページへ切り換えるタイミング、言葉と言葉の間の溜め、
BGMに合わせたアニメーション効果の調整・・・。
コンテンツの情報量が多い分、オーディエンスが置き去りに
ならないよう、細部まで、こだわりにこだわり抜いた。



大賞を受賞したこのプロジェクトは、昨年の4月に始まった。
けれど、俺が加わったのは12月。
だから、自分の仕事を評価されたとは思っていない。
むしろ、全社に広く受け容れられるプレゼンを狙い、
狙い通りに大賞を受賞できたことに、何よりも達成感を感じている。


社長から大賞が発表された後、俺は登壇せず、
プレゼンをしたメインの2人に、商品の受領とコメントを任せた。
恥ずかしかったのもあるけど、ステージは仕事を評価される場。
仕事で評価されて登壇したい。

注目された方が今後仕事がやりやすくなるから、後悔も少しあるけど、
登壇しなかったおかげで、次を目指す気持ちが起きた。
プレゼンを勝ち抜く手応えは掴んだ。あとは、仕事の成果だ。