日本でソーシャルグラフが普及するための最大の障害は、
「ネットは匿名が基本」と考えられていることだと思います。
欧米諸国や中国と比べると、日本人の匿名志向の強さは顕著です(※1)。
Facebookの隆盛は日本のSNSにも影響を与え、mixiはオープン化へ舵を切りましたが、
既にネット上に自らのプライベートな行動ログを残しているユーザーが、
そのログを「どう扱うのか」わざわざ選択する手間をかけてまで、
パブリックなSNSを受け容れなければ、ソーシャルグラフは生活にリーチすることができません。

しかし、そうなるかどうかは、疑いが大きいと考えています。
なぜなら、「パブリック」と「プライベート」が混在する(※2)ウェブでは、
ソーシャルグラフを活用する技術設計は非常に難しく、
もしくは効果が小さいのではないか、と考えるからです。


※1 日本のネットはなぜかくも匿名志向が強いのか
※2 パブリックとプライベートの認識。そして「ソーシャルグラフ」のシステムについて


しかし一方で、僕の勤め先が提供する転職支援サービスのコアターゲット層である
26~35歳ホワイトカラー層に限って考えると、実名登録が原則のFacebookが
広く浸透する可能性は充分にあります。
(mixiよりも速いスピードで周囲に普及する様子を肌で感じています)

もしそうなれば、求人企業がそのソーシャルグラフを利用して自社のターゲット人材に
直接リーチすることも不可能ではありません。つまり、これまで人材会社に払われていたフィーが、
ウェブコンサル会社へのフィーに取って代わられるかもしれないということになります。

Twitterでベンチャーや中小企業の社長さんをフォローしていると、ときどき
「高い」「効果ない」「でも使うしかない」と、人材会社への不満の声をキャッチすることがあります。
有料職業紹介も求人広告も、ビジネスモデルの基本は40年以上変わっていませんが、
人と組織をつなげる形がダイナミックに変わるエポックがすぐそこまで迫っている今、
むしろそれを推進して、顧客の不満を解消していくことが、HR業界には求められています。


さて、昨日NYSEにIPOして想像以上の値がつけられた、ビジネス特化型SNSのLinkedIn。
秋には日本語版のリリースが噂されています。
HR業界内では、戦々恐々とその「Xデー」の到来を待つ雰囲気です。

レジュメ(履歴書)を実名SNS内で公開してスカウトを待つような人は、
中小ベンチャーに務めるポジティブワーカークラスタにある程度限定される、
というのが僕の考えです。
もし日本市場に合わせて部分的に実名を隠せる機能を実装するなら、
資格取得者や専門職など、自分の「職能」を売りにする転職希望者の登録が増え、
おもしろくなるのではないかと思います。